「レズ風俗……そんなのあるの!?」――コミックDAYSで連載中の『愛されてもいいんだよ』のヒロイン、23歳のOL・倫(りん)は、知り合ったばかりの女性から「女性専用レズ風俗店 ゆりとぴあ」のHPを見て、心のなかでそう叫ぶ。同じように感じる読者は多いのではないだろうか。性風俗店といえば男性のためにあるもの。そんな時代は終わりつつある。女性向け風俗、なかでも女性が女性に性サービスをする「レズ風俗」の台頭が目覚ましい。
レズ風俗店に所属し女性にサービスする"キャスト"となった倫を描く『愛されてもいいんだよ』の作者、天野しゅにんたさんと、レズ風俗店を展開する「レズっ娘クラブ」の代表・御坊(おぼう)さんによるクロストークをお届けする。同グループは、2007年に「レズっ娘クラブ」を開店、現在は東京・大阪で計3店舗を構える業界のトップランナーで、同作に取材協力もしている。
レズ風俗、本当にあるんだ!
御坊:『愛されてもいいんだよ』おもしろかったです! 僕はレズ風俗店の経営者で、しかも男なんで、実はキャストがお客様をご案内する現場の様子は知らないんです。「本当にこんな感じなんやろうな~」というリアリティを感じながら読ませてもらいました。
天野:ありがとうございます。私が描いてきた作品は、“百合モノ”……女性同士の恋愛や性愛について描くコミックのジャンルに属します。その世界では以前からたびたびレズ風俗が登場し、私も目にしてはいたのですが、一方でなんとなくそれはファンタジーの産物なんだろうと思っていたんですよ。ところが、永田カビさんの漫画『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(2016年、イースト・プレス)を読んで、本当にあるんだ! と驚いたんですよね。
御坊:永田さんが訪れたのが、うちのお店だったと。同じく漫画がきっかけで知ってくださった方、多いです。
天野:どんな女性が利用しているのか、働いているキャストさんはどんな人たちなのか……すごく好奇心を刺激されました。
御坊:こういってしまうとつまらないかもしれませんが、お客様はいたって「普通」の女性ばかりですよ。年齢は、下は20歳前後から上は70歳前後まで。職業も幅広いです。レズ風俗とはいいますが、セクシュアリティもそれぞれで、実はレズビアンとはっきり自認されている方は少数派で、バイセクシュアル、ヘテロセクシュアルの方が多いですね。夫や彼氏といった、男性パートナーがいる方もいますよ。それから、自分のセクシュアリティがわからないからそれを探るために、という方も少なくありません。
天野:普通というとキャストさんもそうですよね。取材で「レズっ娘クラブの事務所にお邪魔しましたが、みなさん、すてきなカフェで働いていそうな雰囲気。ボイ系*のキャストさんがさっそうと出かけていく姿を見て、さわやかで好感度が高いなぁと思いました。
御坊:『愛されてもいいんだよ』の「倫」は、契約社員として勤めてはいるけれど、仕事にも職場の人間関係にも引っかかるところがあって、疲れ気味。自分はこのままでいいんだろうか……と思っているときに、レズ風俗の世界を知るわけですが、彼女に親近感を覚える女性は多そうですね。
天野:レズ風俗についての話題をメディアでよく見聞きするようになりましたが、特に性にアクティブでもない女性にとっては、まだまだ身近とはいえない世界だと思ったんですよね。普通の女の子は、どういうきっかけがあればそこに飛び込もうって思えるんだろう、とあれこれ想像をめぐらせました。すごく勇気がいるんじゃないかと。
御坊:現実のお客様を見ていても、ものすごい勇気を出して来てくれたんやなぁ、って感じることが多いですね。初めての予約のとき、「お店のことは何年も前から知っていたんですが、やっと決心できました」と書き添える方がとても多いんです。
天野:そこで踏み出した一歩は、人生の大きなターニングポイントになるんじゃないかなぁ。
人生が変わるくらいの出来事
御坊:女性が利用できる風俗店があること自体、まだあまり知られていないですから。
天野:「ないこと」にされてきましたよね。
御坊:男性がサービスする女性向け風俗店もありますが、知ってしまえば「女性同士のほうが安心、怖くない」と思われる方が多いんですけどね。
天野:だからこそ、風俗店を利用したことのある女性と、ない女性とは、何かが違ってくる気がするんです。『さびしすぎてレズ風俗~』の作者・永田カビさんももそうでしたし……。
御坊:「倫」もそうですよね。
天野:はい、それを転機として人生が変わっちゃうぐらいの出来事。レズ風俗にはそういう側面があるのではないかと思っています。
「倫」は偶然からレズ風俗キャスト・諒と出会い、ベッドをともにし、それをきっかけとして大きな決断をする。ひとときのこととはいえ、諒から自分を大事に扱ってもらえたことで、これまで蓋をしてきた自分の本音を大事にできた。そして舞台は、「女性専用レズ風俗店 ゆりとぴあ」へと移っていく。
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