日本でのK-POPアイドルの勢いはとどまることを知らない。ただ忘れてはいけないのは、この一大ブームのウラに、いくつもの消えていったK-POPアイドルたちがいることだ。
闇に葬られた“過激すぎる”アイドルたち
日本でのK-POPアイドルの勢いはとどまることを知らない。とりわけ今、ホットなグループと言えば、先月デビューメンバーが発表されたばかりの「NiziU(ニジュー)」だろう。
「2PM」や「TWICE」といった人気グループの生みの親・J.Y.Park率いる韓国の芸能事務所JYPエンターテイメントと、日本のソニーミュージックの共同企画である「Nizi Project」。
そこから誕生した、日本人9人組ガールズグループ・NiziUは、6月30日にプレデビュー作となるミニアルバム『Make you happy』をリリースするやいなや、オリコン週間デジタルランキングでデジタルシングル(単曲)、デジタルアルバム、ストリーミングすべてで1位となる“初登場三冠”を達成した。
もちろん日本のみならず、近年では「BTS」を筆頭に「BLACKPINK」、「SuperM」などのグループがこぞってアメリカでのプロモーションに注力するなど、世界でも存在感を増している。
ただ忘れてはいけないのは、この一大ブームのウラに、いくつもの消えていったK-POPアイドルたちがいることだ。
この十数年にわたり、ドラマ、音楽、食など様々な分野で「韓流」ブームが起きては消え、幾度も盛衰を繰り返してきた。そして、K-POPアイドルもまた、その都度、音楽性やパフォーマンス、メンバーのコンセプトなどを変えてきた。
その中で、韓国アイドル業界の間で「黒歴史」と呼ばれる時代があったことをご存知だろうか。それが、2010年代半ば頃、K-POPアイドルたちの間に広まった「過激すぎるセクシーブーム」だ。
国の指導を受けた「ヤバすぎる振り付け」
セクシーブームの口火を切ったK-POPアイドルといえば、2010年にデビューした「Girl's Day」だろう。
デビュー当初こそ、従来通りのダンスパフォーマンスを披露してきたが、2013年に一転。セクシー路線に舵を切ったことで、爆発的な人気を獲得したグループだ。
問題となったのは、2014年にリリースした『Something』の振り付け。同曲は、韓国の音楽ランキング番組で1位を総なめするほどのヒットとなったが、冒頭に披露する「腰を振る振り付け」が過激すぎるという批判も殺到、放送通信審議委員会の指導が入ったためか、振り付けの変更を余儀なくされてしまった。
放送禁止になった振り付けで言えば、2012年にデビュー、その後日本にも進出し、現在も活動中である「AOA」の『Miniskirt』も有名だ。
同曲、実は『ミニスカート』という邦題で日本デビューシングルにも選ばれている。そのため初上陸した際には、「セクシーすぎる放送禁止ダンス」として話題を集めた。
指導が入ったと思われる振り付けは、通称“ジッパーダンス”と呼ばれるもの。サビの部分で、スカートのチャックを広げ、スリットからセクシーに脚を見せつける動きだ。
この他にもお尻を大きく揺らす“ヒップウェーブダンス”や、過激すぎる衣装など、度々物議を醸し出したAOA。事あるごとに振り付けを変更しながら、セクシーアイドルとして不動の地位を確立したのは、ある種、巧みな戦略だったのかもしれない。
なぜセクシーブームは終息したのか
Girl's DayやAOAを筆頭にして、拍車がかかってゆくK-POPアイドルたちの「過激なセクシーブーム」。そのピークとなった2014年、2015は、まさに“やりたい放題”という状態だった。
その衣装と相まって「まるで全裸のように見える」とまで指摘された「STELLAR(ステラ)」の『Marionette』。2014年の大ヒットナンバーながら、やはり放送禁止に追い込まれた「EXID(イェクスアイディ)」の『UP&DOWN』。
さらに、艶かしいダンスだけでなく、その歌詞までが「男女の情事を連想させる」と批判を受けた「Dal shabet(ダルシャーベット)」の『Joker』……。彼女たちはあくまで一例だが、過激すぎて放送禁止になるのはもはや日常茶飯事となっていた。
だが、このブームはあるグループの登場によって一瞬で消え去ってしまう。そのグループこそ、冒頭でも触れたNiziUと同じく、J.Y.ParkがプロデュースしたTWICEだ。
2015年10月にデビューしたTWICEが打ち出したのは、「セクシー路線」ではなく、「爽やか路線」。明るく元気な表情とダンス、そして衣装もそのイメージに適う健康的なものとなったのだ。
これにより、他のK-POPアイドルグループもTWICEに追随する形で、脱セクシーに方向転換。かくして「過激なセクシーブーム」は終わりを迎えた。とはいえ、流行は巡る、とも言う。今後、セクシーブームが再燃することはあるのだろうか。
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