パリ検察がレイプと売春斡旋の容疑で、フランスの大手ポルノ配信サイト「ジャッキー&ミシェル」の捜査を開始した。同サイトで配信されるビデオの撮影中に、同意のない性行為を強要されたと、2人の女性が告発をおこなったことがきっかけだ。だんだんと明らかになってきた実態を多数のメディアが伝えている。
大勢に囲まれ、断れない…
9月25日、パリ検察がフランスの大手ポルノ配信サイト「ジャッキー&ミシェル」に対する捜査を開始した。仏紙「20ミニュット」によれば、検察は7月10日に予備捜査を開始し、同サイトが配信する複数の動画の撮影過程でレイプや「売春斡旋行為」があったとされる問題を調査していた。具体的には、女優たちの合意の有無などについて証言を集め、調べていたとされる。
捜査のきっかけとなったのは、今年2月18日にウェブメディア「コンビニ」が配信した「素人ポルノの卑劣な裏側」というビデオだ。「ジャッキー&ミシェル」が配信するポルノ動画に過去に出演した2人の女優が、撮影の過程で合意のない性行為をおこなうよう強制されたと告発した。
ビデオの中で顔を出して証言したネリーという女性は、断ったにもかかわらず説得され、最後には意に反してアナル・セックスをさせられたと証言している。
「私は『いやです、いやです』と何度も言いました。でも、あるシーンを撮影しているときに、彼らは私の意思に反してやったんです」
事前の取り決めは守られず、同意していた以上の人数との性行為を強要されることもあったという。
「私は怖かったんだと思います。断ったり、批判されたりするのが。20歳で、1人で電車に乗って撮影場所まできて……制作チームや男優に囲まれていて、誰も味方がいないんです。『ノー』とは言えませんでした」
「コンビニ」は「ジャッキー&ミシェル」で配信するポルノを制作するイヴ・ルモールという制作会社社長の証言も公開した。彼は笑いながら言う。
「デビューしたばかりの女性たちと仕事をすることは多いです。『アナル・セックスはしたくない』とか言いますが、撮影の日に説明して、やってみるんです。10回に9回はうまくいきます。(中略)最後には女の子たちはすごく満足してますよ。たいていの場合、撮影を始めちゃえばね(笑)。男優がよければなんとかなるんですよ」
もうひとりの女性は、男優による女性の“斡旋システム”が存在することを証言した。彼女がポルノに出演したのは、「ジャッキー&ミシェル」で男優をしていた知り合いに誘われたことがきっかけだった。その知り合いの男は、女性を紹介することで金銭を得ているのかという記者の質問に、女性はこう答えている。
「もちろん。それが彼の役目です。男優はあまり稼げないから」
女性団体が当局に働きかけ
こうした証言を受け、フランスの3つの女性団体「オゼ・ル・フェミニスム!(Osez le Féminisme ! )」「レ・ゼフロンテ(Les Effronté.es)」「売春廃止のために闘う鳥の巣運動(Le Mouvement du Nid qui milite pour l’abolition de la prostitution)」が、2月27日に大審裁判所の検察局に問題を通報し、パリ検察によって7月に予備捜査がおこなわれることになった。
3団体は9月10日に共同声明を発表し、ポルノ産業のシステムに内在する性暴力および性差別に基づく暴力を告発すると同時に、パリ検察による捜査開始を歓迎した。「鳥の巣運動」代表のクレール・キデは声明の中で次のように述べている。
「私たちはこの司法手続きによって、実際のところは撮影された売春にすぎない“ポルノ産業”の実態が明らかになることを望む。私たちと同様の考えの数多くの証言が寄せられている」
売春する側を罰することなく、顧客の側を罰することで売買春をなくそうとする立場を「廃止主義」と言う。フランスは2016年に買春および売春斡旋を禁じる法律を制定して以来、「廃止主義」の立場をとってきた。共同声明によれば、この法律のおかげで、売春斡旋に関する捜査は法律施行から4年で54パーセント増加したが、ポルノはこの法律の死角になっているという。
「ポルノと売春の違いは部屋の中にカメラがあるかどうかだけである。ポルノ犯罪システムを、フランスの性売買廃止主義政策の死角から出すことが不可欠だ」と声明は述べている。
「素人ポルノ」の実態
そもそも、素人ポルノサイトと言われる「ジャッキー&ミシェル」とはどんなサイトなのか。
地方紙「ラ・デペッシュ」は、ポルノ業界潜入記を書いたロバン・ダンジェロ記者の言葉を紹介する。
それによれば、1999年創設のジャッキー&ミシェルは“あえて素人風のビジュアルを保ったまま、プロが制作するビデオを配信するためのプラットフォーム”のようなものだという。
「サイトの運営会社はポルノ制作の責任を可能な限り逃れようと工夫していて、他社から買い上げたコンテンツの配信のみをおこなっています」
実際、「ジャッキー&ミシェル」のマーケティング部長ティエリー・ドゥークルは「20ミニュット」の取材に答え、次のように述べている。
「レイプの捜査に関しては、晴天の霹靂です。私たちは動画を制作していません。制作会社が制作した動画を配信しているだけです。もし問題があれば、その制作会社とのあらゆる協力関係を停止します」
ダンジェロによればほとんどの場合、ポルノの撮影では労働契約は結ばれず、制作会社は映像の使用権を出演者から250~300ユーロで買い取っているという。
「ラ・デペッシュ」の別の記事で証言をおこなったポルノ男優のトニー・カリアーノも、同サイトの実態は、「素人」が制作したポルノをシェアするサイトではなく、プロが制作した低品質の素人風ポルノ配信サイトだと指摘する。
全文はこちら
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200930-00000001-courrier-int
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